【おにぎりの包みで問題解決!】ヌメ革ブックカバー【pata/ぱた】制作までの過程
こんにちは。そぞのぼです!
今回は、読書に集中するためのヌメ革ブックカバー【pata / ぱた】制作までの過程について書こうと思います。
アイデアを探しに図書館へ
10月のある日、新しい革作品のアイデアを求めて図書館に行きました。
そこで見つけたのが、昔の道具や民具に関するこちらの本。
昔のものは構造がシンプルで、好みなものが多いです。
そぞのぼの作品にも通じる部分があるなと思いながら、たまにこういった本を眺めています。
これらの本の中でいくつか気になる道具があり、その中の1つに目が留まりました。
それは…
おにぎりを包む、この包み方です!
よく知られているかたちだけど…改めて見てみるとこの包み方なんかいいですよね✨
これ、何かに使えないかな?と案を巡らせてみました…
●ペン…?何本ものペンをこのシンプルな包み方で包むのはバラバラになるかもな…
●めがね…?簡単な保護としては悪くはなさそうだけど…
●スマホ…?スマホって都度使うこともあるし開け閉めが…
●本…?本を読む時に本と包みが分かれてしまうから、一般的なブックカバーみたく読む時の本の保護までは…
こんな感じで、うーんどうしようか といろいろ考えました。
なかなか作れなかった革のブックカバー
案の中に出てきたブックカバー。
本を読むのが好きなので、前々から「革で作りたい!」と思っていたんです…
↑特に好きな本たち。司馬遼太郎の『国盗り物語』とヘンリー・D・ソローの『森の生活』。
…が、作れない理由がありました。
一般的なかたちの革のブックカバーだと、
革の分厚さとブカブカした感じが気になって読書に集中できないんです…。
これは個人的な感覚なので、気にならない人もいると思うんですが、どうもあの感覚が慣れなくて…💦
せっかく“本が好きな革の作家"という作るべき条件が揃った身でありながら
「一般的なかたちのブックカバーを革で作ろう!」という気になれずにいました。
紙のブックカバーの弱点?
普段使っている紙のブックカバー
そんなわけで、一般的なかたちの革のブックカバーにはなかなか慣れないので、
普段は紙のブックカバーを使っています。
使っているのは100均のクラフト紙50枚入り。
適度にサラサラしてて手触りもよく持ちやすいんです。
厚みも本にぴったり合わせられるのでブカブカせず、
本の目隠しや汚れを防ぐのに役立っています。
ちなみに栞も紙派です…。
金属のものや革のものを使ったりもしましたが、
どちらも紙より厚く強い素材なので本に跡が付いたりするんですよね…。
本と同じ「紙」素材
入手しやすく気軽に使える紙のブックカバーにも弱点があります。
紙のブックカバーを使っていて気になるのが、
本を鞄の中に入れて持ち歩く時に、中で他のものとぶつかって本に力が加わること。
カバーが本と同じ「紙」素材だと、傷や擦れは紙のカバーでは保護しきれず、
そのまま本まで伝わってしまうんですよね。
…ここでみなさん。覚えてらっしゃいますでしょうか?
序盤の【おにぎりの包み方】が登場です!🍙
「本を読む時に本と包みが分かれてしまうから、一般的なブックカバーみたく読む時の本の保護までは…」と書きました。
これが逆に活きてくるんです。
それぞれの良いところを活かす
○目隠しや汚れの防止には、紙。
●しっかり保護には、革。
○本を読む時は、読書に集中できる紙のブックカバーを使い、
●鞄に入れて持ち歩く時は、本の角が折れてしまったりページが破けたりしないように、革のブックカバーでしっかり守る。
適材適所。
やっと本好き革作家が活躍できる場所が見えてきました😭✨
試作!
というわけで、おにぎりの包み🍙は、無事に革のブックカバー📕になることに辿り着きました!
そうと決まったところでさっそく試作!
まずは紙で試作していきます。
仕組みとしてはできあがっているので、
●本に対して、縦横どちら向きに包む?
●包むための紐の形状は、丸?平ら?
●紐の結び方は、ちょうちょ結び?こま結び?
●大きさや長さは、どのくらいがちょうどいい?
●本体とヒモは、固定する?固定する場合は縫う?穴を開けてヒモを通す?
このあたりを考えていく必要があります。サイズは文庫本用で作っていきます!
横と縦、本を包む方向
まずは、本に対する包み方の向き。
↑本に対して横方向に包むパターン(右)と、本に対して縦方向に包むパターン(左)の両パターン作ってみました。
まず、本に対して横方向に包むパターン。よくあるブックカバーと同じ方向です。
飛び出た革の部分(赤い矢印の部分)が短くなってしまうので、
紐から革が抜けてしまわないかが心配なところ。
↑ちなみに留める紐の向きを変えてみたら本が飛び出…終
次に、本に対して縦方向に包むパターン。
↑飛び出た革の部分が長いので、革が紐から抜けてしまう心配はなさそうです。
一般的なブックカバーと違って本に対して縦向きで包むことで、見た目にも新鮮さがありますよね。
おにぎりの包みの形にも近いのでこの形でいくことに。
2冊入れ。文庫に新書も。
おにぎり包みブックカバーを考える上で見つかった、
『目隠しや汚れの防止には、紙。しっかり保護には、革。』
という、適材適所、本と包みが分離するかたちの利点。
紙の試作を見ながらいろいろ試行錯誤していたら、もう2つ、いいところに気が付きました。
●まず、本を2冊・厚さによっては3冊入れられる点です。
これは、一般的なかたちのブックカバーでは難しいですよね。
このブックカバーならではの利点です。
最近、本屋さんでも袋をもらえないことが多くなっているので、
出先で本が増えてしまった時にいいですよね。
複数冊の本を並行して読むことがあるので、個人的にこの機能はありがたいです!
●次に、本に対して縦方向に包むことにしたことで、文庫と新書・縦の長さが違うサイズでも一緒に包むことができる点です。
新書の方が全体的に大きいイメージだったんですが、実は幅は同じなんです。
ということで今回縦方向に包む形にしたことで、幅が同じ新書にも使えます。
↑文庫と新書を一緒にという使い方も可能になりました。
…やはり本に対して縦方向に包むのが正解だったようです😮✨
革紐は平ら?丸?
大きさや長さも紙の試作である程度イメージできたので、ここからは革で作っていきます。
まず、革紐の形状を丸にするか・平らにするかという問題。
ほしい条件としては「何度も結んだりほどいたりするので、適度にしまって適度にほどきやすいもの」。
↑平らな革紐は一般的な革と同じ柔らかさ。
紐の幅によって変わりますが、どの幅でも手で持つと柔らかくクニャっとしなってくれます。
一方で丸い紐は…これは現物を触ってみないとわからないんですが、割と硬いんです。
柔らかい革紐と硬い革紐を比べると、結び目を作る時に
「適度にしまって適度にほどきやすいもの」という条件をいい具合に満たしてくれるのは柔らかい革紐です。
平たく柔らかい革紐なら、
結ぶ時は紐自体にしなりがあるので適度にしまり、
ほどく時は結び目に指を差し込むいい具合の「スペース」ができ紐を抜きやすい。
…というわけで平らな革紐に決定しました!
ちなみに幅もいくつか試してみましたが、
1番左の「おにぎりの包みで使われている紐と同じくらいの幅」が使い勝手が良かったので
この幅に決めました。
ちょうちょ結び?こま結び?
結び方は実際に結んでみたら割と簡単に決まりました。
蝶々結びもコマ結びもしっかり締まってくれて見た目も良いですが
結ぶ手間を考えると断然コマ結びのほうが楽ちん。
ほどく時も幅のある平らな革ひもはそこまで固い結び目ができないので、
その点でもこま結びで問題なさそうです。
革紐と本体は固定?
革紐と本体は固定するのか?
この問題は最後まで決めきれずにいました。
↑本体に固定した方が革紐をなくしてしまう心配がないけど、
上下にピロンと革ひもが飛び出ている状態が、本を読んでいる最中に邪魔になりそうな気も…🤔
そうなると革紐は単体で丸めるなりして置いておけたほうがいいような…🤔
と頭であれこれ悩んでいたんです。
というのもおにぎりの包みのイメージに引っ張られすぎていて
本を読んでいる最中も、革のブックカバーは開いているものだと思い込んでいたんですよね。
でも、実際に使ってみると↓こうでした。
本体もヒモも閉じてスッキリ〜!
何でも実際にやってみるのが大事ですね。
実際に使って「落ち着いて本を読む環境」を実践してみたら、方向性が見えてきました。
というわけで上下に革紐がピロンとなることもなく、スッキリとまとめておけそうなので、
革紐は本体に開けた穴に通すことで固定することにしました。
いざ本番の制作!
ということで本番の製作をして…完成✨
おにぎりを食べる時のように革紐をほどいて…
左右に革をパタパタと開き…
本を読む。
出かける前の靴紐を結ぶ動作や、料理の前のエプロンの紐を結ぶ動作のように
この動作が本を読み始めるときの良い気持ちの切り替えスイッチになり、すーっと本に集中していけます。
ピクニックなど外に持っていって本を読んだりするのも、より楽しくなりそう。
読み終わったら…
再び左右の革をとじて…
革紐を結ぶ。
ふぅ…。
と読了感もしっかり味わえます。
紙のカバーは折り目がしっかりついてしまって、
本を読み終える頃にはすたれてしまうので本1冊ごとで替えていくことになりますが、
革のカバーは何冊分も長く使えて経年変化も楽しむことができます。
こういうところもうまく「役割分担」ができたところかなと思います。
というわけで…ついに完成!!
作品ページもぜひご覧くださいね☆
最後まで読んでいただきありがとうございました!
※参考までに…今回の記事内に出てきた本はこちらです↓(Amazonより)
絵引 民具の事典【普及版】: イラストでわかる日本伝統の生活道具